芝のオーガニック化と地域活性化を推進するサステナブルなゴルフ場とは?

slowz編集部

サステナブルな取り組みをされている方の想いやその背景をslowz編集部がインタビュー。今回は三重県にある津カントリー倶楽部の小島しおり社長に取材をしました。ゴルフをする人以外にもゴルフ場を開放し様々なイベントを開催したり、地域活性化に積極的に取り組まれています。芝のオーガニック化や水質改善にも取り組まれているその背景にあるものは?


地域、地元の交流の源・公民館的な存在でありたい

 

ーー津カントリー倶楽部は地域の方との交流を大切にされているそうですが、その理由はなんでしょうか?

 

「私の父親がここの創業者なんですが、このゴルフ場を作るのに全ての土地の所有者の方のところに行き、話し合って、土地を譲っていただいてきたんです。その際に、皆さんにこの地域の宝物を作ります」というお約束をしてきました。なので、何をやるにしても、地域のためになることだったらやるということにしています。

カントリー倶楽部というのは、海外でもそうですが、地元の方がおしゃれして遊びに来たり、結婚式や何かを展示する機会などに、利用していただける場所という役割があると思うんです。地元の公民館のような存在として、地元の方と密着して行きたいなと考えています。文化センターのようなかたちで、手芸教室やカラオケ教室をやっていただいたり、ゴルフの方が終わってから、お散歩のように使っていただくですとか、地元の方々が自由に集まっていただけて、そして安全に過ごしていただけるような場所になるとすごくいいなと思っています。なので、津カントリー倶楽部では、ゴルフをする方以外にもゴルフ場の素晴らしさを体験いただきたく、様々なイベントや企画を行っているんです。クリスマスディナーショーやコンサートをはじめ、ウォーキングイベントやゴルフトライアスロンなども行ってきました」

ーー今までで印象的なイベントはなんですか?

「ゴルフ場を開放して一般の方が自由に歩いていただけるウォーキングイベントですね。最初は地元の老人養護施設と行ったのですが、皆さん、“常に若く”ということを意識されていて、イベントの名称も「とこわかカントリーウォーキング」と名付けました。「毎年223日の天皇陛下御誕生日の一日を皆さんのお庭に」というコンセプトのもとに行っています。毎年参加者が増えていき、今年(2023)2,000人ぐらいの方が参加いただき、小金色の芝生の上を自由に歩いていただきました。 

ウォーキング以外にも、地元のお店にも出店いただき、キッチンカーを入れたり、環境SDGsという環境のことを感じてもらえる企画をしたり、カラオケやビンゴ大会、ゴルフ体験など、様々な企画を盛り込み、お祭りのような形で開催しました。この冬版がとても好評だったので、皆さんにぜひ夏の青々とした美しい芝の上も歩いていただきたいと思い、地元の小学校にチラシを入れさせていただいて、夏のイベント も実施しました。とても好評で6000人以上が集まっていただきました。


緑の芝生の上を子供たちがワーッと走り回ったり、バンカーの中でも転げ回って遊んでいたり、子供たちの笑い声が響き渡るすごく素敵な空間を見て、まさに“地上天国”のようだなととても感動したんです。ゴルフ場って手入れもされていますし、広大で広く美しい。ゴルフをされない方が、ゴルフ場に入って歩いていただくと、本当に皆さん感激されるんです。これだけ芝生の上を歩ける場所ってないよねと。

やっぱりゴルフ場ってゴルフをするだけではない。こんな素敵な場所をもっとたくさんの方に楽しんでいただけるように使いたいなと、毎年このイベントをするたびに、すごく感じています」



ーー芝生の管理にも有用微生物を利用しオーガニック化に力を入れていらっしゃるとお伺いしましたが、その理由はなんですか?

「もう、20年ぐらい使用しているんですが、沖縄県の琉球大学名誉教授比嘉照夫先生が発見して研究されている有用微生物群(EM)というものがあるんです。善玉菌が集まった有用微生物群で、土壌にも良く、池や川、海などもきれいにする効果があるものなんです。


きっかけとしては、この地域にある岩田川という川を浄化していらっしゃるグループから、岩田川の上流がゴルフ場の敷地内にある池だということで、この池をきれいにさせて欲しいというお話しをいただいたのが始まりです。有用微生物群(EM)団子を作り投入していくと、池がだんだん本当にきれいになり、においもなくなっていきました。高台の山にあるゴルフ場の池から河川に水が流れるので、今までも、常に水質検査をしてきちんと管理していたのですが、EM団子を使うようになると、水質がさらに良くなり、夏には蛍が出るようにもなったんです。


地元の方にお話ししたら、昔は蛍もいたそうなんですが、もうしばらく見ていなかったと。その蛍がまた出てきたということで、話題にもなり、三重テレビさんなどにも取材をしていただきました。それがもう20年くらい前のこと。以来ずっと有用微生物群(EM)を使い続け、今では自分のところでも培養しています。


池に入れてその池の水を使って全ての芝に散水していますので、本当に芝自体が元気になり、イキイキとしているんです。初めていらした方からは、「ここのゴルフ場の芝は青々としているし、とてもやわらかいね」と良くお褒めいただきます。本当にすごく気持ちよくて、私は夏は素足でゴルフをしたりすることもあるほどです。


点じゃなくて、人生の出会い、ストーリーにつながるきっかけに

ーー津カントリークラブさんでは、障害者のゴルフ大会を30年間にわたって開催されているんですよね?

「そうですね、障害者の大会は今年で29年目になり、2024年は30年の記念大会となりますね。はじめた当初は障害者の方の大会なんて、どこも開催しているところがなく、とても珍しいものでした。私は当時アメリカに留学していたのですが、父から障害者の大会をしたいのだが、日本では事例がない。アメリカは進んでいるだろうから見てきてと依頼がありました。調べてみると、アメリカはとても進んでいて、地元を上げて大会を盛り上げようという姿勢がすごいんです。皆さん、ボランティアでその大会にも参加していて、地元と大会が一体となっているんです。これはすごいと思い、様々な写真をとり日本に送りました。それがベースとなり、この障害者の大会は、地元のボランティアの方にも大勢ご協力をいただいて、毎年開催しています。


なので、名称も神様から挑戦という使命を与えられた人々とボランティアの祭典!!」なんです。参加者とボランティアの数が同じくらい集まるというすごい大会で、厚生労働大臣杯でもあるんです。地元の方や企業、小学校など、みんなが手伝いに来てくれ、みんなで作り上げてる大会なんですよね。


ーー30年間も続いている大会なんてすごいですね。

「そうですね、30年も行っていると様々なこともありますね。印象的なエピソードをあげると、当初、小学校4年生で初めてお父さんと一緒に連れられてきた聴覚障害の男の子が、その後、ゴルフを大好きになり、大人になってから私たちと一緒に、世界的な障害者ゴルフの大会を日本に誘致するためのプレゼンを行いました。そのプレゼンがきっかけで、国際手話を行う奥様と出会うことができ、結婚式もうちのゴルフ場でしていただいたんです。これは本当に嬉しい出来事でした。自分の人生を変えるきっかけとなった大会だから恩返ししたいと、その彼が今では、初めて参加する聴覚障害の小学生の男の子をサポートしてくれます。このように、いろんな出会いがあり、そこからまた物語ができていく、つながっていくというのが本当に素晴らしい大会なんです」

ーーしおり社長にとってサステナブルとは?

有用微生物群(EM)のことや地域の活性化への取り組みなどはしていますが、サステナブルということ自体はあまり意識したことはないんです。ただ実業としてもう好きでやっているというところがあります。ただ自分がいいと思うこと、そして体にいいことを、継続しているだけ。自分が体験したいいことを人に伝えていく、するとそれがまたつながって広まっているのかなと思います。



三重県は伊勢神宮もあります。式年遷宮を20年一度」行い、ずっとそれを続けることによって何千年も続いているものです。サステナビリティという言葉が入る前から、日本は元々そういう国、文化があるのだと思います。単純に自分が好きなこと、いいと思うものを継続していく、それを伝えていくということが、結果的にサステナブルにつながるのかなと思います。

ーー地域貢献を積極的にお取り組みされていますが、今後の展開はいかがですか?

「新しい取り組みとして、「メディカルフィットネス」というものをオープンさせました。メディカルフィットネスは、フィットネスと医療相談ができるような診療所を併設させたもの。三重大学元学長の内田淳正先生や、スポーツ整形で有名なみどりクリニックの瀬戸口先生にご協力いただいて設立しました。お医者様の指導によってフィットネスの先生が運動を組んでいただき、それに基づいて運動するという形なんです。


「地元の方たちに愛される宝物を作る」と父が皆さんに話してきたことを一つずつでも形にしていきたい。地元の公民館的な存在として、皆さんの交流や健康を維持に貢献できるような場所になればいいなと思っています。
そして、今後はゴルフツーリズムにも力を入れていき、日本の素晴らしさを海外の方もももっと知っていただけるようにしたいと考えております。先ほどの国際障害者大会の誘致プレゼンのお話しをしましたが、その時も参加国の審査員13名の方が、満場一致で日本に票を入れてくださったんです。日本のホスピタリティ、食、温泉などが海外からはとても評価されています。三重は伊勢神宮もありますし、自然や文化をより体感していただきたいなと考えております。

 

取材協力/津カントリークラブ  https://tsu.co.jp/


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