レザー作家・TOMYが目指す、”廻るものづくり”とは?

伊藤かさね


副産物である皮を革へ、そして長く愛せるアイテムへと変えるレザー職人のTOMYさん。生産性が重視され、ロスが当たり前なやり方には疑問を感じ、自身のブランド「TOMYMADE」を立ち上げた。UNISEXでスーツにも私服にも合わせやすい革小物が男女問わず人気だ。最近では、ラコステとコラボし、古着とレザーを使ったアート作品を作るなど活動の幅を広げているとのこと。


これはまた面白いお話を伺えそうだと、1年ぶりに北千住のアトリエへとお邪魔しました。





新たに加わった”廻るものづくり”


「あれから、いろいろ進んだんですよ」と開口一番、ちょっと得意げな笑みを浮かべたTOMYさん。


「実は新しいブランドを考えてて...」


聞けば、既存ブランド「TOMYMADE」に加え、”廻るものづくり”をテーマとした新ブランド”mawaru made”を準備中だとか。


「純粋にTOMYMADEが好きな方のためにも、新作は常に作っていかなければならない。一方で、これだけモノが溢れているなか、新しいものを作り続ける必要があるのか、作り手としてずっと違和感を感じていた」


mawaru madeでは、”廻る”ことを共通項としたものづくりを行っていく。代表的なのが、TOMYMADEで買ってもらった財布やバッグを引き取り、修理や表面をきれいにした上でヴィンテージ商品として再び販売する取り組みだ。新品とはまた違う、色合いの変化が味わい深さが魅力であえてこちらを選ぶ人も少なくない。



お直しではなく、さらにかわいく。



mawaru madeは革だけに留まらない。私服でも古着やヴィンテージが好きだというTOMYさん。写真は、最近展示会で知り合った方から買い付けた軍物のコートを、革の端切れをつかってリメイクしたもの。アクセントになるだけでなく、補強にもなる。


「普通にぱっと見でかわいいよね。わざわざ軍物とかリメイクとか言わなくても」


他にも、カンカン帽のつばの割れた部分を革で作ったベルトで留めたりと、よりかわいく、かっこよくする過程に腕が鳴る。



創作意欲をかきたてる、ヴィンテージの花器



次々と新しいアイテムを生み出す、TOMYさんを支えているのがヴィンテージの花器たちだ。


「制作とは未だ世の中にないものを作り出す瞬間。だからこそアトリエは自分の世界に入り込める空間にしないといけないんだよね」


とにかく”いろんなもの”があるTOMYさんのアトリエだが、長年愛用してるドイツやフランス製のヴィンテージの花器が革とはまた違った色合いをアトリエに添えている。一応、販売もしているのでアトリエにお邪魔する際はチェックしてみて。



娘やその友達にかっこいいことしてるって思われたい



思えば、以前の取材時点で、革小物を引き取って修理をしたうえでヴィンテージとして売り出すことを実験的に行うなど”廻る”がテーマとなりつつあったTOMYさん。


「ずっと落としどころを探してきたが、新しいブランドとして分けていくことでようやく自分の中で整った気がする」


原動力は今も昔も「かっこいいことがしたい」。


「相対的なかっこよさを求めていた時期もあったけど、今は質やストーリー。娘やその友達にかっこいいことしてるって思われたいんだよね」。


取材を通し、数年後、数十年後にはどんなことにチャレンジしているのか見てみたいと強く思わされた。



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